「脂肪」・・・。脂肪は、美しくなりたいと思う女性にとって、本当に憎き存在です。また、健康面でも、成人病など様々な病気を引き起こすことから、何かと悪者にされてきました。しかし、本当に脂肪は私達の敵なのでしょうか?そもそも脂肪とは一体何なのでしょう?今回はそんな脂肪について調べてみました。
体脂肪の重要な働き
体内にある脂肪を総称して「体脂肪」というのですが、この体脂肪は、私達の体にとって、とても重要な働きをしています。
まず、その体脂肪の働きについてご紹介しましょう。
タンパク質を節約してエネルギーを放出
私達人間が生きていくために必要なエネルギーは、3大栄養素といわれる炭水化物(糖質)、脂肪(脂質)、タンパク質から得られるのですが、
炭水化物は日々の生活の中で常に消費され、タンパク質は体の成長や修復に使われることから、主に脂肪がエネルギー源として使われます。
そして、なんと、脂肪は炭水化物やタンパク質の2倍のエネルギーを出すことができ、さらに、体中に蓄えることができるため、体中には、たくさんのエネルギーが蓄えられていることになります。
また、脂肪には、もうひとつとても大事な役割があります。
それは、脂肪をエネルギー源として使うことで、生命にとって重要なタンパク質をエネルギー源として使わずにすむことから、私達の健康を、ひいて言えば生命を維持してくれているのです。
体温調節
皮下脂肪は、体温調節の役割も担っており、寒い時は、体温が外に逃げ出さないように体温の低下を防いだり、暑い時は、外気の気温を体内に伝わりにくくし、体温が上がりすぎるのを防いでくれています。
体脂肪はこの働きを自動的にやることで、体温を一定に保ち、私達の生命を維持してくれている、まさに、エアコンのような働きをしています。
女性の月経
月経が正常な周期で来ることは、女性の健康のバロメーターとなっていますが、月経が正常な周期でくるためには、「エストロゲン」という女性ホルモンが、正常に分泌するされることが必要です。
そのためには、ある量以上の体脂肪が必要で、体脂肪が少なすぎると、エストロゲンの活動がおさえられてしまい、月経異常が起こりやすくなってしまいます。
また、女性の体内にも、男性ホルモンの一種である「アンドロゲン」というホルモンがあるのですが、ストレスが加わったり、必要以上のダイエットによって、体脂肪を減らし過ぎると、「アンドロゲン」が活発になり月経に異常が起こります。
体脂肪は、そんな「アンドロゲン」を「エストロゲン」に変え、正常な月経を維持する役割を果たしているのです。
肥満とは?
体脂肪が私達の健康を守り、生命を維持するために日夜働いてくれていることが分かりました!
ただ、そんな体脂肪も、栄養の摂取と消費のバランスが崩れ、蓄積されすぎると病気の原因になってしまいます。
この体脂肪が過剰に蓄積された状態を、「肥満」というのですが、
肥満になると、
- 動脈硬化症
- 高血圧症
- 糖尿病
- 心臓病
- 運動中の心臓障害
などの生活習慣病を引き起こしてしまいます。
そして、これらの病気は、脂肪が、腹部に蓄積された「腹部型肥満」の場合に発症しやすく、
さらに、この「腹部型肥満」は、
- 「内臓脂肪型肥満」
- 「皮下脂肪型肥満」
(腹腔内の内臓のまわりにより多くの脂肪が溜まっている)
(全身の皮下に脂肪が過剰に蓄積している)
の2つに分けられ、特に「内臓脂肪型肥満」の場合に発症しやすいそうです。
腹部内臓脂肪と生活習慣病
それでは、なぜ、「内臓脂肪型肥満」は、生活習慣病を引き起こしてしまうのでしょうか?
内蔵脂肪は、分解されると「遊離脂肪酸」と言う脂肪酸が生じるのですが、この「遊離脂肪酸」は腹腔内の血管を通り、肝臓に取り込まれます。
そのため、内臓脂肪が増加すると肝臓に取り込まれる脂肪も増えてしまい、肝臓で作り出される、「VLDL」と呼ばれる物質が増加。
「VLDL」は水に溶けるため、血液中に溶け込むことによって、血液中に脂肪が多くなることから、高脂血症を引き起こしてしまい、さらに、高脂血症は脂肪肝、心臓病、脳卒中を、引き起こす原因となってしまうのです。
また、それだけでなく、内臓脂肪が増加すると、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇。
すると、高血圧や糖代謝の悪化を引き起こし、最終的に心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の原因となるのです。
腹部皮下脂肪と生活習慣病
そして、「腹部皮下脂肪」も同様に、分解されると「遊離脂肪酸」と言う脂肪酸が生じます。この「遊離脂肪酸」は、末梢の血管に大量に流れ込むため、末梢組織は大量の脂肪であふれることに。
結果、抹消で糖代謝の悪化が引き起こされ、糖尿病になってしまうそうです。
ただ、皮下脂肪から放出される遊離脂肪酸は内蔵脂肪ほど多くはないため、内臓脂肪型肥満に比べると、皮下脂肪型肥満のほうが生活習慣病になる危険性は少ないそうです。
遺伝子で決まる?
体脂肪が蓄積されすぎると成人病になるリスクが高くなることが分かりました!
ただ、それが分かっても、
「自分が太っているのは遺伝のせいだから・・・」
と、やせることをあきらめている人も多いかもしれません。
私達は、太っている、痩せている、ということだけではなく、寿命が長い、短い、若くして病気になる、ならない、など、遺伝子がすべて決定していると思い込みがちです。
(その考え方は、1976年に発売された、クリントン・リチャード・ドーキンス博士の著書「利己的な遺伝子」の影響によるものだそうです)
なので、100歳以上生きる長寿の人は、病気を起こす遺伝子が極端に少ないか、または、ないのではないか、と思いがちなのですが、長い間信じられていたその考え方が誤りであることが、2010年、ベークマン・M博士による研究で明らかとなったそうです。
ベークマン・M博士は、100歳以上の長寿の人たちは、生活習慣病のリスク遺伝子を、本当に持っていないのかを実験するために、100歳以上の長寿の人ばかりを集めた「超高齢グループ」と、中年の人ばかりを集めた「中年グループ」の遺伝子を調べました。
その結果、病気のリスク遺伝子の保持率において、両グループにまったく差がなく、100歳を超える超高齢の人たちも、中年グループと同じ、病気のリスク遺伝子を持っていることが分かったのです。
(ちなみに、長寿の人の約半数が80~99歳で生活習慣病を発症していることも分かっており、遺伝子の保有数よりも発症した時期で寿命が決まることも明らかとなっています)
つまり、肥満も同じく、遺伝子によって決まるのではなく、生活習慣、栄養状態によって、常に変化していること、そのため、自分の力で予防でき、そして克服できることが明らかとなったのです。
環境で遺伝子が変わる?
ここで、余談ですが・・・
驚くべきことに、生活習慣は遺伝子をも変えることができ、このことを、「エピゲノム(後天的遺伝情報)」と呼ぶそうです。
つまり、先天的には肥満になる遺伝子を持っていなかったとしても、生活習慣が悪ければ遺伝子が先天的から後天的に書き換えられてしまうそうなので、環境、食べ物、生活習慣がいかに大切かが分かります。
肥満に悩む人は、悪い生活習慣が遺伝子をコントロールしてしまっているため、正しい生活をこころがけ、エピゲノムを書き換えていくことが大切とのことで、ある意味、「遺伝子にコントロールされている」というのは本当ですが、その遺伝子をコントロールしているのが、私達自身ということなのですね。
褐色脂肪細胞の場所は肩甲骨?白色脂肪細胞の増える時期は?分化が進む?へ続く