昨日、約一ヶ月ぶりに片頭痛に襲われました。
何度経験しても慣れることのない痛みに、

周囲の人はみな、健康そうなのに、
なぜ、自分だけがこんな思いをしなければならいないのかと、
恨みたくなる気持ちがつい、起こってしまいます。

ある時は、片頭痛を克服しようと前向きな気持ちになったり、
しかし、ある時は、これは運命なのだと諦めたりと、
気分の波も激しく、片頭痛に生活を大きく左右されているといっても、
過言ではありません。

そこで、今日は、
片頭痛と思われる症状に悩んでいた、
歴史上の有名人を紹介したいと思います!

その方とは、「羅生門」「鼻」「蜘蛛の糸」「杜子春」
などでおなじみの、日本を代表する作家の芥川龍之介。

芥川龍之介は、1927年3月~4月に、
執筆されたと言われる、
遺稿となった小説「歯車」の中で、

僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?-と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だつた。僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖(ふ)やし、半ば僕の視野を塞(ふさ)いでしまふ、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失(う)せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、-それはいつも同じことだつた。

と記しているのですが、これは、
片頭痛の前触れとして現る症状「閃輝暗点(せんきあんてん)」を、
描写したものだと言われています。

しかし、この当時、「片頭痛」や
「閃輝暗点」という症状は解明されていなかったのでしょう。

芥川龍之介は、この奇妙な幻覚に追い詰められると、
自分が精神病を発症してしまったのではないかとの不安に陥り、
とうとう、同年7月、自ら命を断ってしまうのでした。

また、この小説は、

「どうした?」
「いえ、どうもしないのです。……」

妻はやっと顔を擡(もた)げ、無理に微笑して話しつづけた。

「どうもした訣ではないのですけれどもね、
唯何だかお父さんが死んでしまいそうな気がしたものですから。……」

 それは僕の一生の中でも最も恐しい経験だった。
――僕はもうこの先を書きつづける力を持っていない。
こう云う気もちの中に生きているのは何とも言われない苦痛である。
誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?

と、締めくくられているのですが、
奥さんは、後に、このラストは、
激しい頭痛で横になっている芥川龍之介とのやり取りを、
描写したもので、事実であったことを明されており、

芥川龍之介が、片頭痛と閃輝暗点の症状に、
苦しめられていたことがよく分かります。

ちなみに、現在、医師の国家試験に、
芥川龍之介が描写した「閃輝暗点」の症状が出題されており、
苦しい中でも、その客観的で的を射た描写は、
さすが文豪といえるでしょう。

ところで、芥川龍之介が、片頭痛に苦しんでいたなんて、
初めて知りました!

私は、閃輝暗点の症状はあまりひどくないのですが、
視野が塞がれていく気持ち悪い感じや、
起き上がれないほどの痛み、

殺してほしいと思うほど絶望的な気持ちになることに、
とても共感できました。

芥川龍之介が現代に生きていたら、
閃輝暗点に怯えることもなかったのに、と思いますが、
だからこそ、後世に残る傑作が残せたのでしょうね!

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